●救急車の適正利用
救急隊員に聞いてみた
救急救命士 森本義浩
○救えなくなる命
救急車は、けがや急病などで、緊急に病院へ搬送しなければならない傷病者のためのものです。緊急ではないときに救急車を要請することで、本当に救急車を必要とする事故や急病が発生したとき、遠くの救急車が出動することとなります。要するに現場到着までに時間がかかってしまうので〝救える命が救えなくなってしまう〞ことも考えられます。
例えば、南町の南出張所に救急車が1台あって、南出張所の向かいに住んでいる方がいるとします。その方からすると、万が一の時は、目の前から救急車が来てくれて、1分程度で救急隊が処置をしてくれるという関係にあるわけですが、不適切な要請で救急車が出動してしまったら、岩見沢消防署から救急車が出動することになります。現場到着時間で考えると、間違いなく南出張所からの出動より時間がかかります。救える命が救えなくなってしまう恐れがあるというのが一番の問題ですね。
○安易な理由
「救急車で病院に行けばすぐに診察してもらえる」「通院や入院するときのタクシー代わりに使う」「休日当番医が分からないので救急車に来てもらう」といった緊急とは言えない理由のものです。
救急車を要請する方にとっては、その瞬間が緊急であり、非日常の事態です。私たち救急隊は、要請する方が、そういう状態で待っているという認識で、毎回現場に向かっていますので、もし不適切な理由で救急要請されたとしても誠意をもって活動します。ただ、もし不適切な理由で要請した場合、医療機関への負担が大きくなること、救える命が救えなくなる可能性があることを考えていただければ、少し状況が改善していくのではないかと思います。
(不適正な利用の例)
・交通手段がない
・どこの病院に行けばいいか分からない
・優先的に診てもらえる
○出動件数
救急車の出動件数は、年々増えている状況です。1日平均で約10件になります。この件数は、ほかのまちと比べると多いです。
3,379人の内訳
○軽症=緊急性がないではない
搬送人員の約半分が軽症となっていますが、緊急性のない軽症患者というのはあくまでも結果論なんですね。安易に救急車を呼ぶケースも見受けられるんですが、検査しないと分からない病態はたくさんあります。救急車に積んである医療器具は、基本的には緊急性の高い傷病者に対して処置をするためのもので、検査する器具はごくわずかなんです。救急隊も状況を聞いて、傷病者を観察して、検査が必要と判断した場合は、適切な診療科目へ救急搬送します。その後の検査結果で入院が必要な病態が見つかれば中等症や重症。異常なく帰宅されたのであれば軽症ということになります。要するに検査しなくては分からないことがあるので、軽症者イコール緊急性のない患者とはなりません。
○難しい判断
救急業務は「救急隊による搬送は緊急に搬送する必要があるもの」と消防法で定められています。この解釈が難しい部分で、例えば、自分の子どもが転んでけがをした場合、お母さんなら心配しますよね。「頭をぶつけていたらどうしよう」「今までこんなけがをしたことがない」「夜にけがをしたけど、明日まで大丈夫かしら」など、お母さんにとっては、その時が緊急になるので…。社会通念上、要するにモラルにゆだねられている部分になるので一概には言えない難しい部分となっています。
○便利なものが
緊急かどうかを判断する目安として、便利なものがいろいろとあります。消防庁ホームページからダウンロードできる救急車利用マニュアル〝救急車を上手に使いましょう〞や〝救急受診ガイド〞というものが、すごく分かりやすいので、ぜひ見ていただきたいです。それと、全国版救急受診アプリ〝Q助〞というのもあって、お子さんをお持ちの方には特におすすめしたいです。症状を選んで進めるものなので、とても便利です。ぜひ活用してほしいですね。
○救急車を呼ぶときは
消防指令センターの職員が誘導するので、慌てず、ゆっくりと答えていただければと思います。その間に、救急隊は出動しますので、慌てて伝える必要はありません。
消防指令センター:119番です 火事ですか?救急ですか?
あなた:救急です
ここがポイント:救急であることを伝える
消防指令センター:住所はどこですか?
あなた:岩見沢市○○○○○丁目○番地です
※枝番や号室まで伝えるとスムーズです。
ここがポイント:来てほしい住所を伝える
消防指令センター:どうしましたか?
あなた:母親が胸が痛いと言って倒れました
ここがポイント:具合の悪い方の症状を伝える
消防指令センター:おいくつの方ですか?
あなた:65歳です
ここがポイント:具合の悪い方の年齢を伝える
消防指令センター:あなたの名前と連絡先を教えてください
あなた:私の名前は○○○○です、電話番号は…
ここがポイント:通報した方の名前と連絡先を伝える