高齢化とそれに伴う労働人口の減少は、社会全体の大きな課題です。持続可能な地域社会の形成のため、市はさまざまな取り組みを進めています。今月号では〝北海道プライムバイオコミュニティ〟で重要な取り組みとして位置付けられている2つの取り組みを紹介します。
■農業の持続性確保
□スマート農業の取り組み
市は、大切な基幹産業である〝農業〟の持続性確保のため、デジタル技術などを駆使した、新しい農業スタイルを目指した取り組みを進めています。その一つが、北海道大学やNTTグループと連携しながら実証を進めている〝ロボットトラクター(無人走行)〟の本格的活用です。
5Gなどの通信を使い、離れた場所から複数のトラクターを同時に監視・制御する機能を実現し、夜間作業を含めた農作業に最適なスケジュール管理により、生産者の負荷軽減や作物の品質向上が期待できます。
□国の取り組み
都市部への人口集中が進む中、農林水産業を成長産業化し、温室効果ガス・海洋プラスチックごみの削減に積極的に貢献するため〝2030年に世界最先端のバイオエコノミー※社会の実現〟を目指す〝バイオ戦略〟が進められています。
※化石燃料の代わりに生物資源を活用し、持続可能な経済社会をつくる考え方。
□北海道プライムバイオコミュニティ
北海道大学をはじめとする道内大学、道や岩見沢市などの自治体、企業、研究開発機関などで構成し、昨年設立した組織。農業など一次産業のスマート化による労働生産性の向上、環境に配慮した生産技術の研究と事業化、北海道バイオブランドの確立を図ることで〝誰もが農林水産業に従事したくなる憧れの北海道〟を目指しています。
■エネルギーの確保
□エネルギーの地産地消と農作業活用に関する取り組み
さまざまな用途で普及が進む〝ドローン〟は、肥料散布など農作業の効率化にも有効と期待されています。しかし、その飛行には大量のエネルギー(電力)が必要なため、広大な農地がある岩見沢では、安定・効率的にエネルギーを確保することが重要となります。
また、万が一の災害時の非常用電源の確保も考えなければなりません。
市は、そのためのエネルギー確保の取り組みを進めています。
□エネルギーを地産地消する
現在、北海道大学や関連企業と連携し、自前でエネルギー供給源を持つことで、エネルギーの地産地消を可能とする〝地産地消・自立型地域エネルギーシステム〟の取り組みを進めています。
まずは第1弾として、北村赤川鉱山で温泉ガスを燃料とする発電機能と太陽光発電を組み合わせた、新たな地域発電機能の実証を始めています。
□こんな活用を
今年度は、発電した電力で〝ドローン用バッテリー〟を充電し、肥料散布などの活用実証を行っています。
今後は、収穫作業後の残渣(さ)などを使った燃料(バイオ燃料)を生成し発電に利用するなど、農業分野での新しいエネルギー循環モデルの形成を目指しています。
このほかにも、長時間にわたって停電が発生した際、このシステムで発電した電力で避難所をサポートするなど、安全安心な地域づくりにも役立つと期待できます。
■地産地消・自立型地域エネルギーシステムの活用に向けて
日立北大ラボラボ長代行 竹本享史(たかし)博士
2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、地域のエネルギーを地域で有効活用する、エネルギーの地産地消の重要性が高まっています。また、居住地域が広く分散する農業地帯において、エネルギーの安定供給は市民の皆さんに安心な生活を送ってもらう上で喫緊の課題であり、農業支援および非常用電源を目的とした地産地消・自立型地域エネルギーシステムは本課題を解決する有望な手段の一つとして期待しています。
今後、農機メーカーや農家の方との共創を通じて、農業残渣(さ)燃料化による資源循環型農業の検討、地産地消エネルギーを活用した環境負荷の少ない農業モデルの社会実装を本実証サイトにて推進し、岩見沢市の農業の持続的発展に貢献していきたいと考えています。
□日立北大ラボ
日立製作所が北海道大学内に設立した共同研究ラボ。自治体と連携した実証実験や探索的活動を通じて、北海道における社会課題の解決を進めている
問合先:情報政策課(有明町南1自治体ネットワークセンター3階)
【電話】25-8004