■農業をより良いものに
いわみざわ地域ICT農業利活用研究会(副会長)道下一記さん
□農業を始めたきっかけ
農業を始めたきっかけ親が楽しそうに農業を営んでいるのを見て「農業もいいな」「そのうちやりたいな」と考えていましたが、親から「一度社会に出てから」と言われ、農業機械関係の会社に就職し、本州で働いていました。
そして、子どもを地元の幼稚園に通わせたくて、15年程前に戻ってきて農業を始めました。
□スマート農業への第一歩
会社勤めの時、いろいろな農業機械や最新技術を知ることができ、実際にGPSを使った機械を使っている人の「まだ使いづらい」といった声も聞いていました。
でも、簡単にできることは簡単にしたい、例えば、畑の防除や肥料散布をむらなく丁寧に行うには、走る場所に目印の杭を打つ必要があり、翌年違う作物を育てるとなると、杭を打ち直す作業をしていました。こんな手間を少しでも無くしたくて、その時には技術も進んでいたので、GPSを使ったトラクターのガイダンスシステムを市内でもいち早く導入しました。このシステムで、走る場所が画面上に自動的に表示され、杭を打つ作業が無くなりました。
その他にも、作業の進捗状況などがリアルタイムでデータで確認できるので、それまで自分の感覚でやっていた作業を効率的に行うことができます。
肥料をまく機械にどれだけ肥料を入れたら何アール作業できるかといったことは、農業機械のメーカーがデータを出していますが、実際には誤差があります。その誤差が分かるようになり、修正して、自分専用のデータにすることで、必要な分だけを過不足なく一回でまけるようになります。
このような作業の効率化で、一日で7ヘクタールしか肥料をまけなかったものが、3倍以上の面積にまけるようになり、何日もかけて行っていた作業が、高い精度で時間単位でできるようになりました。
一日の中で違う作業ができるので、計画が立てやすくなったほか、その日の天気を見て、風がない時間帯に作業を終わらせるといった対応もできます。
□みんなでより良い農業を
衛星からの位置情報だけでは、1から2メートル誤差があり、種をまいたり、より細かく肥料をまいたりといった高い精度を求められる作業はできませんでした。
そのため、より高精度な情報が得られるRTK‐GPSを導入しようと考えましたが、そのためには基地局を建てる必要があり、とても個人でできるものではないため、農家のみんなで研究会を立ち上げ、市やJA、関係団体と協力して、運用していくこととなりました。
研究会では、機械の使い方や設定方法などを学ぶための研修会を開催しています。機械は高価ですが、金額に見合った、それ以上の効果があるということを知ってもらい、普及台数を増やす、RTK‐GPS基地局を有効活用する件数を増やす取り組みを行ってきました。
今では一定の台数が普及してきたので、これからはリモートセンシング(離れた場所から情報を測定・数値化すること)やドローンなどを使って何ができるかを話し合っています。
□農業の未来
最終的には、農業経営を体験するテレビゲームのようになればと思います。操作端末から全ての作業を指示して、ロボットが作業を行う。その様子をリアルタイムで確認できるのが最終形ですね。
後はソフトウェアを各社・各機械共通で使えるようにしてほしいです。そうすれば、自分の全ての作業データを簡単に蓄積でき、同じソフトウェアなので、他の人との比較もできるようになります。
それぞれでやっている技術や経験がデータ化され、それを比較検討し、より良いものを取り入れていくことで、技術も上がっていき、作物の収穫量や品質の向上につながると思います。
問合先:市企業立地情報化推進室(有明町南1自治体ネットワークセンター3階)
【電話】25-8004